睡眠の質を上げたいと思ったとき、多くの方が見直すのは寝る前の習慣です。スマホを置く、照明を落とす、寝具を替える。どれも意味はあります。

けれど、それだけでは足りないことがあります。睡眠の質を左右するのは、寝る直前よりも、日中の身体の過ごし方です。
朝に光を浴びて体内時計を動かし、日中に身体を使って体温を上げ、夜にその体温がすっと下がっていく。この流れがあると、人は自然に深く眠りやすくなります。

眠りは、すべり台に似ている

公園のすべり台を思い浮かべてください。
勢いよく滑り降りるには、まず階段を登って高いところに立つ必要があります。低い場所からでは、どれだけ「滑ろう」と頑張っても、身体は進みません。

眠りもこれに近い仕組みです。日中に光を浴び、身体を動かし、体温と覚醒をしっかり上げておく。それが階段を登ることにあたります。夜、その高さから体温が下がっていく坂道を、身体は眠りとして滑り降りていきます。
日中をほとんど動かずに過ごすと、すべり台の高さが足りません。夜になっても坂がゆるく、寝つきが悪い、眠りが浅いと感じやすくなります。

体温の高低差が、眠りの深さをつくる

人の身体の内側の温度(深部体温)は、一日の中で上がったり下がったりしています。夕方ごろに高くなり、夜にかけて下がっていく。この下がり始めが、眠気の合図になると考えられています。

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、日中はできるだけ太陽の光を浴びて体内時計を整えること、日中にしっかり身体を動かすことが、睡眠休養感(朝起きたときの休まった感覚)を高めるとされています。

睡眠の質を測る一番身近なものさしは、この「朝の休まった感覚」です。何時間寝たかより、起きたときに身体が軽いかどうかを見てください。

B-side GYM の考え方

夜の眠りは、夜だけでつくるものではありません。
朝の光と、日中の一歩から始まっています。

睡眠の質が上がらない人の、よくある誤解

「長く寝床にいれば、回復する」
眠れないからと寝床で長く過ごすと、かえって眠りが浅くなり、休まった感覚が下がることがあると言われています。眠くなってから寝床に入るほうが、眠りの密度は上がります。

「疲れていれば、眠れる」
頭は疲れていても、身体はほとんど動いていない。デスクワーク中心の方に多い状態です。頭の疲れと、身体が眠りに入る準備ができていることは別物です。この点は疲れきっているのに、なぜか眠れない夜の正体でも書いています。

渋谷で働く方に多いのは、駅から地下通路を通ってオフィスに入り、昼食も建物の中で済ませ、一日ほとんど外の光を浴びていないパターンです。本人は忙しく動き回っているつもりでも、身体にとっては「昼が来ていない」一日になっています。

今夜からできる、睡眠の質を上げる方法

自分でできることを2つ、手順つきでお伝えします。

1. 起きたら、まず外の光を浴びる
カーテンを開けて窓際に立つか、できればベランダや外に出て、数分間、外の明るさを浴びます。通勤の最初の1駅分を歩くのも良い方法です。朝の光は、体内時計に「一日が始まった」と知らせる合図になります。

2. 寝る1時間半〜2時間前に、湯船につかる
40℃くらいのお湯に15分ほど、肩までつかります。九州大学と住宅設備メーカーの共同研究では、就寝の1時間半〜2時間前に40℃のお湯にしっかりつかったほうが、シャワーだけのときより寝つきが早く、睡眠の満足度も高かったと報告されています。いったん上がった体温が、寝るころに下がっていく坂道をつくるイメージです。

あわせて、夕方以降のカフェインは控えめにしましょう。

いびきが大きい、寝ているあいだに呼吸が止まっていると言われる、こうした工夫を続けても眠れない日が1か月以上続く、という場合は、睡眠時無呼吸などが隠れていることもあります。一度、医療機関に相談してください。

一人では、すべり台の高さが戻ってしまう理由

朝の光と入浴で、眠りはある程度変わります。それでも戻ってしまう方には、共通点があります。日中ずっと肩や首に力が入ったまま、身体の緊張が夜まで抜けないことです。

緊張が抜けないままだと、体温が下がる坂道の途中で、身体がブレーキをかけてしまいます。硬さと眠りの関係は眠れない身体は、なぜ硬いのかで詳しく書いています。

B-side GYMでは、まず固まった筋肉や筋膜をゆるめて力みを抜き、そのうえで深部の支える筋肉を働かせるトレーニングを行います。日中に身体をしっかり使える状態に戻すことが、夜の眠りの土台になるからです。渋谷BASEは渋谷駅から徒歩5分、体験は¥6,600(60分)です。

眠りの準備は、朝から始まっている

ぐっすり眠れない夜があると、つい「今夜こそ早く寝よう」と夜のことばかり考えてしまいます。

けれど、すべり台の高さは、朝と昼に積み上げるものです。明日の朝、カーテンを開けて光を浴びるところから始めてみてください。明日の夜の眠りは、その朝の光から始まっています。