体が硬い原因は、生まれつきだけではありません。
関節の形や組織の性質には個人差があり、生まれ持った要素がゼロとは言えません。ただ、多くの人の硬さは、ふだん使っていない動きの範囲を、身体と脳が「もう使わないもの」として手放していることから来ていると考えられます。
つまり、硬さの多くは、今の生活の使い方の結果です。だからこそ、変えられる余地があります。
体が硬いのは、生まれつき?
「昔から前屈が苦手だった」という方は少なくありません。たしかに、骨盤や股関節の形、太ももの骨の向きなどには個人差があり、それによって動きやすい方向や、届きやすい距離が変わることがあります。
それでも、セッションで多いのは、「生まれつき硬い」と話していた方が、初回のセッションの中で前屈の範囲が変わり、驚かれる場面です。骨の形はその場では変わりません。変わったのは、筋肉の緊張と、動いても大丈夫だという身体の感覚のほうです。
体の硬さを「体質だから」とあきらめる前に、ほかの原因を見ておく価値は十分にあります。
体が硬い原因は、けもの道に似ている
身体の動ける範囲は、山のけもの道に似ています。
毎日通る道は、踏み固められて歩きやすいまま残ります。でも、通らなくなった道には、少しずつ草が生え、やがてどこが道だったのかわからなくなります。
長く座って過ごす毎日では、股関節を大きく曲げ伸ばしする、腕を頭の上まで上げる、背中をひねる、といった道をほとんど通りません。すると、その範囲は使われない道になり、まわりの筋肉や筋膜は、狭い範囲で動くことに慣れていきます。年齢とともに筋肉や腱が硬くなりやすいと言われていることも、草が生えるのを早めます。
「伸びない」のは、筋肉の長さだけの問題ではない
もう一つの原因は、脳の側にあります。
ストレッチで柔らかくなるのは、筋肉そのものが長くなるからというより、「ここまで伸ばしても大丈夫」と脳が受け入れる範囲が広がるからだ、という考え方が研究者のあいだで有力になっています。伸ばしたときに感じる「もう無理」という感覚は、筋肉の限界の手前で、脳が早めにかけているブレーキでもあるのです。
使っていない範囲ほど、脳はそこを「知らない道」として警戒し、早めにブレーキをかけます。疲れや睡眠不足、ストレスで身体が張りつめているときに硬く感じやすいのも、このブレーキが強くなるからだと考えられます。
硬さにはいくつかの種類があり、むやみに伸ばすと逆効果になることもあります。その見分け方は、身体が硬い人が、やみくもにストレッチしてはいけない理由で詳しく書いています。
体が硬いこと自体は、病気ではありません。ただ、動ける範囲が狭いと、ほかの場所がその分を肩代わりします。股関節が動かない分を腰が、背中が動かない分を首や肩が引き受ける。この肩代わりが続くと、腰や肩に負担が集まりやすくなります。
B-side GYM の考え方
体の硬さは、性格でも体質でもなく、毎日の使い方の記録です。
通る道を増やせば、身体は道を残します。
自分でできる、硬さの確認と対処
安全にできるものを二つ紹介します。
1. 膝を曲げた前屈で、硬さの場所を確かめる
まず膝を伸ばしたまま立って前屈し、指先が床からどのくらい離れているかを見ます。次に、膝を軽く曲げて同じように前屈します。膝を曲げると楽に届くなら、硬さの中心は太ももの裏にある可能性が高いと考えられます。膝を曲げてもあまり変わらないなら、腰や背中、お尻のまわりも動きにくくなっているかもしれません。勢いをつけず、ゆっくり行ってください。
2. 吐く息で、ブレーキをゆるめる
床に座り、片脚を伸ばしてもう片方の膝を曲げます。伸ばした脚のほうへ、少し張りを感じるところまで身体を倒したら、そこで止めます。鼻から吸って、口から細く長く吐き、吐くたびに力が抜けて少しだけ前へ進むのを待ちます。反動はつけません。左右30秒ずつ、痛みのない範囲で行ってください。
関節に強い痛みや腫れがある、こわばりが朝に長く続く、しびれを伴うといった場合は、硬さではなく別の原因が隠れていることもあります。早めに整形外科などの医療機関で相談してください。
一人でストレッチしても、また硬くなる理由
ストレッチで一時的に範囲が広がっても、その範囲を日常で通らなければ、道にはまた草が生えます。脳にとって、ストレッチの時間に一度通っただけの道は、まだ安心できる道ではないからです。
B-side GYMでは、硬くなっている場所と、動きすぎて肩代わりしている場所を見分け、縮んだ筋肉をゆるめてから、広がった範囲を実際に使う動きへつなげていきます。新しく通れるようになった道を、毎日の動きの中で踏み固めていくイメージです。渋谷BASEは渋谷駅から徒歩5分、体験は ¥6,600(60分)です。
通る道を増やせば、身体は道を残す
体の硬さは、性格でも体質の宣告でもなく、これまでの使い方の記録に近いものです。
今日、いつもは通らない道を一本だけ歩いてみてください。腕を頭の上まで伸ばす、深くしゃがむ。通る回数が増えるほど、身体はその道を残しておこうとします。