身体が硬い。だから、ストレッチをする。ごく自然な考えです。

でも、やみくもにストレッチをしても、身体はなかなか柔らかくなりません。それどころか、やり方を間違えると、かえって硬さを強めてしまうこともあります。

なぜ、伸ばしても柔らかくならないのか。そして、本当に必要なことは何か。お話しします。

硬い筋肉には、硬くなる理由がある

まず、知ってほしいことがあります。筋肉が硬いのには、それぞれ理由があります。そして、その理由は、一つではありません。

たとえば、縮んで硬くなっている筋肉があります。使いすぎたり、同じ姿勢で縮こまったりして、短くなったまま固まっている。

一方で、引き伸ばされて硬くなっている筋肉もあります。反対側の筋肉に引っ張られて、常に伸ばされた状態で、こわばっている。

この2つは、同じ「硬い」でも、まったく逆の状態です。そして、対処法も、正反対になります。

縮んで硬いところは、ゆるめて伸ばす必要がある。でも、引き伸ばされて硬いところを、さらに伸ばしたら、どうなるか。すでに伸びきっているものを、もっと引っ張ることになり、状態は悪化します。

やみくもが危険な理由

やみくもにストレッチをするのが危険なのは、伸ばすべきでない筋肉まで、伸ばしてしまうからです。

身体は、綱引きでバランスを取っている

なぜ、逆の状態が同時に起きるのか。

身体の筋肉は、前後・左右で、引っ張り合ってバランスを取っています。綱引きのような関係です。

どこかが縮んで強く引っ張ると、反対側は引き伸ばされて、引き負ける。この綱引きのバランスが崩れると、縮んで硬い場所と、伸ばされて硬い場所が、同時に生まれます。

このとき、やるべきことは、はっきりしています。縮んで強く引いている側を、ゆるめる。引き伸ばされて弱っている側は、伸ばすのではなく、むしろ働かせる。

つまり、全部を伸ばせばいいわけではないのです。どこをゆるめ、どこを働かせるか。その見極めがないまま伸ばすと、綱引きのバランスは、かえって崩れていきます。

脳が「固めている」硬さもある

さらに、もうひとつ、やっかいな硬さがあります。脳が、防御のために固めている硬さです。

身体は、不安定さや危険を感じると、無意識に力を入れて、身体を固めます。これは、自分を守るための、防御反応です。

この場合、硬いのは、筋肉そのものの問題というより、脳が「力を抜くと危ない」と判断して、緊張させ続けているからです。

こういう硬さは、いくら物理的に伸ばしても、根本は変わりません。伸ばした直後は少しゆるんでも、脳がまた、固めにいくからです。

脳が固める硬さへの対処

必要なのは、伸ばすことではなく、脳に「もう力を抜いても大丈夫だ」と、安心させること。身体の土台を整えて、防御する必要をなくしていくことです。

だから、「伸ばす前」の見立てが大事

ここまでをまとめると、こうなります。

身体の硬さには、いくつもの種類がある。そして、それぞれ、対処法がまったく違います。

だから、原因を見極めずに、ただ伸ばすだけでは、うまくいきません。

大事なのは、伸ばす前の「見立て」です。どこが縮み、どこが伸ばされ、どこを脳が固めているのか。それが分かってはじめて、正しくゆるめ、正しく働かせることができます。

自分の身体のどこが、どういう理由で硬いのか。これは、自分ではなかなか判断できません。やみくもに伸ばして、良かれと思って続けたことが、実は逆効果だった。そういうことが、本当によくあるのです。

正しく、しなやかな身体へ

身体が硬いことには、たくさんのデメリットがあります。力みやすく、疲れやすく、怪我もしやすくなる。だからこそ、柔らかく、しなやかな身体を取り戻す価値は、とても大きい。

でも、その方法は、やみくもに伸ばすことではありません。自分の硬さの正体を正しく見立て、ゆるめるところと働かせるところを、見極めること。

もし、ストレッチを続けても、身体が柔らかくならないと感じているなら。それは、あなたの努力不足ではなく、伸ばし方が、身体に合っていないだけかもしれません。

一度、自分の身体が、なぜ硬いのかを、確かめてみてください。正しい見立てがあれば、身体は、思ったよりずっと、しなやかに変わっていきます。