肩が重くなって、首を倒したり、腕を回したりする。
すると、その場ではすっと楽になる。
ところが翌朝には、また同じ重さが戻っている。
結論から言うと、ストレッチが効いていないわけではありません。
ストレッチは、たまった緊張を一時的にゆるめる「消しゴム」としては、ちゃんと働いています。
戻ってしまうのは、こりを生み出している姿勢と力の入り方が、毎日同じように書き込まれ続けているからです。
消しゴムで消しても、同じ場所に同じ字を書き続けていれば、紙はいつまでも真っ黒なままです。
肩こりのストレッチが「即効」で効く理由
ストレッチをすると、こわばっていた筋肉の緊張がゆるみ、血の巡りも一時的に良くなります。
重だるさが軽くなるのは、このためです。
ただし、その効果は長くは続きません。
脚の筋肉を20秒伸ばした研究では、広がった関節の動く範囲が、5分後、10分後と時間がたつにつれて元に近づいていきました。
伸ばした直後がいちばん大きく、そこから少しずつ戻っていく。
ストレッチの即効性は、もともとこういう性質のものなのです。
だから、ストレッチで楽になった感覚が数時間もたないのは、ごく自然なことです。
翌日には戻る、本当の理由
では、何がこりを書き込んでいるのか。
デスクワークでパソコンに向かうと、腕は前に出て、頭も少し前に出ます。
このとき肩甲骨は背骨から離れて外に開き、肩は内側へ引き込まれます。
頭を支えるために、首から肩にかけての筋肉は、一日中ブレーキをかけ続けることになります。
セッションでよくお会いするのは、毎日ストレッチもマッサージもしているのに、肩甲骨が外に開いたまま固まっている方です。
本人は肩をよくケアしているつもりでも、こりの土台になっている位置は、ずっと変わっていない。
肩こりの中心地は、肩ではなく肩甲骨にあります。
肩だけを伸ばしても、肩甲骨の位置が変わらなければ、翌日も同じ場所に同じこりが書き込まれていきます。
戻りにくい肩にするために、自分でできる2つのこと
ストレッチに加えて、次の2つを試してみてください。どちらも座ったままできます。
1. すくめて、すとんと落とす
- 息を吸いながら、両肩を耳に近づけるようにぐっとすくめる
- そのまま3秒止める
- 息を吐きながら、力を一気に抜いて、肩をすとんと落とす
- これを3回
力を入れてから抜くと、伸ばすだけのときより、「力が抜けた状態」を身体が感じ取りやすくなります。
2. 肩甲骨を、下げながら寄せる
- 背すじを軽く伸ばして座る
- 肩をすくめないように注意しながら、左右の肩甲骨を、斜め下に向かって背骨のほうへ寄せる
- 胸が少し開いたところで、ゆっくり息を吐きながら5秒止める
- これを5回
伸ばすのではなく、サボりがちな背中側の筋肉を働かせることが目的です。
1時間に1回、思い出したときにやるだけでも、肩甲骨が外に開きっぱなしになるのを防ぐ助けになります。
なお、腕のしびれや強い痛み、頭痛をともなう場合は、自己判断でのケアを続けず、医療機関に相談してください。
B-side GYM の考え方
ストレッチは、こりを消す消しゴム。
戻らない肩をつくるには、毎日書き込まれている姿勢そのものを変える。
一人で続けても戻ってしまう人へ
この2つで楽になる方もいます。
ただ、何年も続いた肩こりの場合、一人ではなかなか戻らないことがあります。
理由は、崩れた位置が、本人にとっての「まっすぐ」になっているからです。
肩甲骨が開いたまま固まっていると、正しい位置に戻したときのほうが、かえって不自然に感じられます。
自分では見えない背中のことなので、どこが緊張し、どこがサボっているのかを、感覚だけで見分けるのは難しいのです。
だからこそ、まず外から見て、崩れの起点を確かめることに意味があります。
渋谷や表参道で、デスクワークの合間に肩をもみ続けている方は、一度、背中で何が起きているかを確かめてみてください。
ストレッチは悪者ではありません
最後に、誤解のないようにお伝えします。
ストレッチは、肩こりのケアとして悪いものではありません。
その場の緊張をゆるめる消しゴムとして、むしろ上手に使ってほしいものです。
大事なのは、消しゴムだけで終わらせないこと。
毎日同じ字を書き込んでいる姿勢と、力の入り方そのものを変えていく。
そこまでできて、はじめて肩こりは「戻らないもの」に変わっていきます。