肩甲骨は、「浮いている骨」です
まず、肩甲骨の特殊さを知ってください。
背中にある、あの三角形の骨。
実はこの骨は、背骨や肋骨に、がっちり固定されているわけではありません。
まわりの筋肉によって吊るされるようにして、背中の上を、いわば「浮いて」いるのです。
だから、肩甲骨は、本来とても自由に動きます。
上げる、下げる、寄せる、開く、回す。
この自由な動きがあるおかげで、腕は大きく、なめらかに動けます。
逆に言えば、肩甲骨の位置と動きは、それを吊るしている、まわりの筋肉のバランスに、完全に依存しています。
筋肉のバランスが崩れれば、肩甲骨の位置は、簡単にずれてしまうのです。
デスクワークで、肩甲骨は「外に開いて固まる」
では、デスクワークを続けると、肩甲骨に何が起きるか。
パソコンに向かって腕を前に出す姿勢では、肩甲骨は、背骨から離れて、外側に開いた位置に引っ張られます。
専門的には、外転と呼ばれる状態です。
この位置で、一日中固定されると、筋肉のバランスが崩れます。
肩甲骨を上に引き上げる筋肉、僧帽筋の上部や、肩甲挙筋は、緊張しっぱなしで、こり固まる。
これが、あの、首から肩にかけての、重いこりの正体です。
一方で、肩甲骨を背骨に引き寄せる筋肉、菱形筋や、僧帽筋の下部は、使われないまま、どんどん弱っていく。
つまり、こっている筋肉と、サボって弱っている筋肉が、同時に生まれる。
この綱引きのアンバランスが、肩甲骨を、開いた位置に固定してしまうのです。
肩甲骨が動かないと、全身に連鎖する
肩甲骨が、開いた位置で固まると、影響は肩だけにはとどまりません。
まず、肩の関節です。
腕を上げる動きは、肩甲骨がなめらかに連動して、はじめて成り立ちます。
肩甲骨が固まると、この連動が崩れ、肩関節が本来の可動域を出せなくなる。
腕が上げにくい、回しにくい、といった不調につながります。
次に、姿勢です。
肩甲骨が外に開くと、肩は前に引き込まれます。これが、巻き肩です。
そして巻き肩は、背中が丸まる猫背と、セットで進行していきます。
さらに、呼吸にも及びます。
肩甲骨まわりが固まると、肋骨の動きも制限されます。
胸郭がうまく広がらず、呼吸が浅くなる。
肩甲骨は、肩・姿勢・呼吸をつなぐ、いわば結節点。
ここが動かないことの影響は、想像以上に広く連鎖していくのです。
揉んでも戻るのは、位置が変わっていないから
肩がこったとき、こり固まった僧帽筋の上部を揉むと、その場は楽になります。
でも、すぐ戻る。
なぜなら、肩甲骨が、開いた位置に固定されたままだからです。
こりの原因は、こっている筋肉そのものではなく、肩甲骨の位置を崩している、筋肉全体のアンバランスにあります。
強く引いて緊張している側をゆるめるだけでは、足りません。
弱ってサボっている菱形筋や僧帽筋下部を、もう一度働かせて、肩甲骨を、本来の位置に引き戻す必要がある。
そこまでして、はじめて、肩甲骨は正しい位置に戻り、こりは根本から変わります。
揉むだけでは、位置が変わらないから、また同じようにこるのです。
B-side GYM の考え方
こりの正体は、こっている筋肉ではなく、肩甲骨の位置。
ゆるめるだけでなく、サボっている筋肉を働かせて、位置ごと引き戻す。
肩甲骨の状態は、自分では分からない
やっかいなのは、自分の肩甲骨が、今どういう位置にあり、どの筋肉が緊張し、どの筋肉がサボっているのか、自分では、まったく見えないことです。
背中は、自分の目で見えません。
そして、崩れた位置が、自分にとっての「普通」になっているため、違和感にも気づけません。
だからこそ、肩甲骨まわりを、やみくもに動かしたりほぐしたりするのは、かえってアンバランスを強めるリスクがあります。
どの筋肉をゆるめ、どの筋肉を働かせて、肩甲骨をどう戻すか。
その見立てがあってはじめて、正しく動かせます。
もし、揉んでも揉んでも肩こりが戻ってくるなら。
原因は、肩ではなく、その奥の肩甲骨にあるかもしれません。
一度、自分の肩甲骨が、どういう状態になっているのかを、確かめてみてください。
そこが動き出すと、肩も、姿勢も、呼吸まで、変わりはじめます。