「意識しても続かない」の、本当の理由

ストレッチをしても、マッサージに行っても、しばらくすると元に戻る。
「正しい姿勢を意識しましょう」と言われても、気づけば背中は丸まっている。

デスクワークの肩こりは、なぜ治らないのか。

理由は、はっきりしています。
あなたの身体は、姿勢が悪いから緊張しているのではありません。
頭を落とさないために、緊張せざるを得ない状態になっているのです。

あなたの首は、釣り竿になっている

人間の頭は、およそ5〜6kg。ボウリングの球ほど重さがあります。

その重い頭が、身体の真上に乗っているうちは、支えるのに大きな力は要りません。
骨格が、まっすぐ受け止めてくれるからです。

ところが、パソコンに向かって頭が前に出ると、話が変わります。

前に出た頭は、重力で前に落ちようとします。
その頭を落とさないために、首から背中の筋肉が、後ろから引っぱり続けることになります。

これは、釣り竿と同じ構造です。
竿の先に、重りをぶら下げている。
その重りが落ちないよう、後ろから、ずっと力をかけ続けている。

しかも、頭は前に出るほど、重さが増していきます。
竿の先が伸びれば伸びるほど、支える力は大きくなる。

肩や首の筋肉が、一日中、力を抜けないのは当然です。
あなたの首は、一日中、釣り竿として働いているのですから。

脳は、落ちることを本能的に恐れています

ここで、もう一段深い話をします。

人間が生まれつき持っている恐怖は、たった2つだと言われています。
ひとつは、大きな音。
そしてもうひとつが、落ちること、支えを失うことです。

生まれたばかりの赤ちゃんでさえ、支えを失う感覚があると、反射的に手足を広げてしがみつこうとします。
学習したわけではありません。生まれつき、身体に備わった防衛反応です。

つまり、支えを失うことは、人間にとって最も原始的な恐怖ひとつなのです。

だから、頭が土台から外れて前に落ちかけているとき、脳は本能的にそれを止めにいきます。
背中の筋肉に、力を入れ続けろ、と命令する。

意識して力を抜こうとしても抜けないのは、そのためです。
それは、意識よりもずっと深いところで働いている、防衛の反応だからです。

緊張が抜けないと、身体は休めなくなる

この緊張には、もうひとつ厄介な側面あります。

身体が常に力んでいる状態は、脳にとって「まだ気を抜けない」というサインになります。
すると、活動モードの神経が優位になり、身体は回復モードに戻れなくなる。

肩や首が張ったまま夜を迎えると、寝つけない。
深く眠れないから、疲れが抜けない。
疲れた身体は、さらに姿勢を崩し、さらに緊張する。

肩こりが、単なる肩の問題ではないのは、このためです。
それは、身体全体が休めなくなっているサインでもあります。

机の上のコップになれば、力は要らない

では、どうすればいいのか。

答えは、姿勢を意識することではありません。
頭を支えなくていい身体をつくることです。

想像してみてください。
机の上に、水の入ったコップが置いてある。
そのコップは、安定した土台の上に、ただ乗っているだけです。

倒れる心配がないから、誰も支えていない。
水がこぼれる不安もない。
ただ、静かにそこにある。

これが、本来の身体のあり方です。

お腹に力が入り、体幹が働いていれば、身体の中心に安定した土台ができます。
その土台の上に、頭がまっすぐ乗る。

すると、脳は判断します。

「落ちない。だから、支えなくていい」

首や背中の筋肉は、ようやく力を抜けるようになります。
釣り竿だった首が、コップを乗せた机になる。

ほぐすより、土台をつくる

だからこそ、ほぐすだけでは治らないのです。

マッサージで筋肉をゆるめても、土台がなければ、身体はまた頭を支え始めます。
釣り竿に戻るしかない。だから、また凝る。

正しい姿勢を意識しても続かないのは、意志が弱いからではありません。
支える土台がないまま、意識だけで頭を保とうとしても、身体はもたないのです。

必要なのは、努力ではなく、構造です。

お腹の奥を働かせ、体幹に土台をつくる。
その上に、頭がまっすぐ乗る身体を取り戻す。

そこまでいけば、あなたの首は、もう釣り竿でいる必要がなくなります。

B-side GYM の考え方

必要なのは、努力ではなく、構造。
筋肉をほぐす前に、頭を支える土台を、体幹につくり直す。

その肩こりは、あなたのせいではありません

もう一度、お伝えします。

肩がこるのは、あなたの意志が弱いからでも、姿勢を意識していないからでもありません。
落ちる頭を支えるために、身体が本能的に、力を入れ続けているだけです。

そして、その本能は、土台をつくることでしか鎮められません。

もし、何をしても肩こりが戻ってくるなら。
ほぐす先ではなく、支える土台のほうに、目を向けてみてください。

身体が力を抜けるようになったとき、肩こりだけでなく、眠りも、疲れの取れ方も、変わりはじめるはずです。