肩こりを何とかしたくて、筋トレを始めようか迷っている。
あるいは、ジムで鍛えているのに、肩こりがむしろひどくなった気がする。
そんな方に向けて書きます。

結論からお伝えすると、肩こりに筋トレは効く可能性が高いです。
デスクワークの人を対象にした研究でも、首と肩まわりを鍛える筋トレで、こりや痛みが減ったという報告があります。
ただし、肩をすくめる癖が残ったまま鍛えると、こりの元になっている筋肉に、さらに仕事を重ねてしまうことがあります。
効くかどうかを分けるのは、鍛えるかどうかより、どの筋肉に仕事をさせるかです。

肩こりと筋トレの関係を、研究から見る

デンマークで行われた研究では、首や肩の慢性的な痛みがあるデスクワークの女性を、ダンベルで首肩まわりを鍛えるグループと、自転車こぎで全身の体力をつけるグループなどに分けて、10週間比べました。
その結果、痛みがはっきり減ったのは、首肩まわりを鍛えたグループでした。全身の運動では、痛みは大きくは変わりませんでした。

同じ研究チームは、ゴムチューブで腕を横に上げる運動を、1日わずか2分ほど続けるだけでも、首肩の痛みが減ったと報告しています。
長い時間をかけなくても、正しい場所に、毎日少しずつ刺激を入れることに意味があるということです。

肩まわりは、働きすぎの同僚と、席だけある同僚の職場

それなら、なぜ筋トレで肩こりが悪化する人がいるのでしょうか。

肩まわりの筋肉を、ひとつの職場にたとえてみます。
首の付け根から肩の上にかけての筋肉は、朝から晩まで呼ばれ続ける、働きすぎの同僚です。
パソコンに向かって腕を前に出すたび、頭が前に出るたび、真っ先に仕事を引き受けて、肩をすくめる方向に力を入れ続けています。

一方で、肩甲骨を下げて背骨に寄せる、背中の下のほうの筋肉は、席はあるのに仕事を振られない同僚です。
本来は肩の位置を支える役目があるのに、デスクワークの姿勢では出番がなく、力の入れ方を忘れていきます。
このしくみは、肩こりの中心地は肩甲骨という記事でも詳しく書いています。

肩こりが筋トレで悪化する人に、多いこと

セッションでよくお会いするのは、ジムでベンチプレスや肩を押し上げる種目を熱心に続けている方です。
重さを上げるときに、無意識に肩がすくみ、首に力が入っている。
これは、働きすぎの同僚に、残業をさらに上乗せしている状態です。
本人は鍛えているつもりでも、仕事が集まっているのは、いつもと同じ首の付け根なのかもしれません。

肩甲骨まわりの筋肉の研究でも、バランスが崩れている人には、首の付け根が働きすぎず、背中の下のほうがしっかり働く種目を選ぶことがすすめられています。
力みを足し算する筋トレの落とし穴は、筋トレで追い込むほど、身体は悪くなるでも書きました。

B-side GYM の考え方

肩こりの筋トレは、働きすぎの筋肉を休ませ、
席だけあった筋肉に仕事を戻すこと。

自宅でできる、肩こり改善の筋トレ1種目

席だけある同僚に、仕事を戻すための1種目です。器具はいりません。

うつ伏せで、親指を上にして腕を横に浮かせる

大事なのは、腕を高く上げることではありません。
肩甲骨の内側から下のあたりが働いている感覚があれば、正解です。
首の付け根に力が入る、肩がすくむと感じたら、浮かせる高さを下げるか、ひじを軽く曲げてください。

研究にならうなら、長くやるより、毎日少しずつ続けるほうが現実的です。
なお、腕のしびれや強い痛み、腕が上がらないといった症状がある場合は、筋トレを始める前に整形外科で相談してください。

一人で鍛えても、肩こりが戻ってしまう理由

この1種目で、肩が軽くなる方もいます。
ただ、何年も続いた肩こりでは、一人ではなかなか変わらないことがあります。

理由は、すくめ癖が、本人にとって当たり前の力の入り方になっているからです。
自分では肩を下げたつもりでも、実際には首の付け根で動かしている。背中は自分の目で見えないので、どちらの同僚が働いているのかを、感覚だけで見分けるのは難しいのです。
だからこそ、まず外から見て、仕事が誰に偏っているのかを確かめることに意味があります。

鍛えることは、仕事を配り直すこと

肩こりの筋トレは、筋肉を大きくすることではありません。
働きすぎの筋肉を休ませて、席だけあった筋肉に、本来の仕事を戻していく。いわば、肩まわりの仕事の配り直しです。

渋谷や表参道で、デスクワークの合間に肩をもみ続けている方は、鍛える前に一度、肩の職場で誰が働いているのかを確かめてみてください。
配り方が変わると、同じ一日を過ごしても、夕方の肩の重さは変わっていきます。