ベルトの穴がひとつずれた。シャツのボタンのあたりが張る。
腕や脚はそれほど太くないのに、お腹だけが前に出てくる。

そう感じて、腹筋運動を始める男性は少なくありません。
けれど結論からお伝えすると、男性のぽっこりお腹の原因は、腹筋の弱さより、お腹の奥、内臓のまわりにたまる「内臓脂肪」であることが多いと言われています。
腹筋を鍛えることは無駄ではありません。ただ、それだけではお腹は凹みにくい。原因に合った順番で取り組むことが近道です。

男性のお腹は、内臓脂肪がたまりやすい

体の脂肪には、大きく分けて二つの付き方があります。
皮膚のすぐ下につく「皮下脂肪」と、お腹の奥で内臓を囲むようにつく「内臓脂肪」です。

一般に、女性は皮下脂肪がつきやすく、男性は内臓脂肪がつきやすいとされています。
内臓脂肪型では、手足は細めなのにお腹だけがせり出す、リンゴ型の体型になりやすい。男性のぽっこりお腹に多いのは、この形です。

内臓脂肪型肥満の目安として、日本では「おへその高さの腹囲が男性85cm以上」という基準が使われています。健診でこの数字を指摘されている方は、見た目の問題だけでなく、血圧や血糖、脂質の数値とあわせて考える必要があります。

内臓脂肪は、玄関先の段ボールに似ている

内臓脂肪には、よく知られた性質があります。「つきやすく、落ちやすい」ということです。

玄関先に積まれた、通販の段ボールを想像してみてください。
忙しい週が続くと、届くたびに一つ、また一つと増えていきます。気づいたときには、玄関がふさがっている。けれど、片づけると決めた週末には、意外なほどあっさり減っていきます。

内臓脂肪もこれと同じで、生活が乱れた時期には素早くたまり、生活の流れが変われば、比較的早く応えてくれます。
だからこそ、増えた原因の側、つまり段ボールが届く流れを変えることが大切です。

B-side GYM の考え方

お腹を凹ませる近道は、お腹ではなく生活の中にある。
内臓脂肪は、たまりやすいぶん、片づけ始めれば応えてくれる。

腹筋運動だけでは、お腹が凹みにくい理由

「お腹の脂肪は、お腹を動かせば落ちる」。こう考えたくなりますが、鍛えた場所の脂肪だけが落ちる、という現象は、研究では確認されていません。
腹筋運動を6週間続けた比較試験でも、腹筋の持久力は上がった一方、お腹まわりの脂肪は減らなかったと報告されています。

脂肪は、体全体のエネルギーの出入りで増え減りします。腹筋運動は、お腹を支える力をつけるには役立ちますが、消費するエネルギーは大きくありません。段ボールの例えで言えば、腹筋は「玄関の床を補強する」ことに近い。床は丈夫になっても、段ボールが届き続ければ、玄関は片づきません。

男性の内臓脂肪を増やす、三つの生活の流れ

セッションで男性のお話を伺うと、お腹が出てきた時期と、生活が変わった時期が重なっていることがよくあります。異動や会食の増加、在宅勤務への切り替えなどです。

お酒と、その後の食事
アルコールそのものにもエネルギーがあり、1gあたり約7kcalあります。さらに、飲んでいる間は肝臓がアルコールの分解を優先するため、脂肪の処理は後回しになりやすいと言われています。締めのラーメンや、遅い時間のつまみが重なると、段ボールは一気に増えます。お酒との付き合い方は会食のたびに、身体は「炎上対応」に追われているでも詳しく書きました。

睡眠不足
睡眠と内臓脂肪の関係を調べた米国の研究では、睡眠を1日4時間に制限した2週間で、食べる量が1日300kcal以上増え、体重はほとんど変わらないのに、お腹の内臓脂肪が約11%増えたと報告されています(参加者は12人と少数の研究です)。

座りっぱなし
長く座り続けると、太ももやお尻の大きな筋肉がほとんど働かない時間が続きます。使われなかったエネルギーが余り、それがお腹の奥にたまりやすくなると考えられています。
お腹の力が抜けた座り姿勢が続くと、見た目にも前へ出やすくなります。姿勢が原因のぽっこりお腹についてはぽっこりお腹は、脂肪ではなく「反り腰」かもしれませんで解説しています。

自分でできる、ぽっこりお腹のチェックと対処

1. お腹の「つまみ方」と腹囲を確かめる
朝、立った姿勢で、おへその横の皮膚を指でつまんでみてください。厚くつまめるなら皮下脂肪が多め、つまめるのは薄いのにお腹が張って前に出ているなら、内臓脂肪が多いことが考えられます(あくまで目安です)。
あわせて、メジャーをおへその高さで水平に回し、軽く息を吐いたところで腹囲を測ります。月に1回、同じ条件で測ると、体重よりも変化がわかりやすくなります。

2. 「飲む日」と「寝る時刻」を先に決める

腹囲が85cmを大きく超えている、健診で血圧・血糖・脂質を指摘されている、短期間で急にお腹が張ってきた、痛みや息苦しさをともなう。こうした場合は、自己流で済ませず、先に医療機関で相談してください。

一人では戻ってしまう理由と、取り組む順番

お酒を控え、早く寝て、少しお腹が凹む。それでも、忙しい時期が来るとまた戻ってしまう方は多くいます。

理由の一つは、体を動かす土台、つまり関節の動きや呼吸が戻っていないことです。肩や腰がこわばり、呼吸が浅いままでは、歩くことも、大きな筋肉を使うトレーニングも、すぐに億劫になります。

B-side GYMでは、まずお話を伺い、生活のどこから段ボールが届いているのかを一緒に探します。そのうえで、こわばった関節や筋肉をゆるめて動ける状態に戻し、お腹の奥で背骨を支える筋肉と、脚やお尻の大きな筋肉を働かせるトレーニングへ進みます。腹筋運動は、その順番の最後に置いています。
渋谷で働く男性のお腹を見ていると、運動量より、夜の時間の使い方に原因があることも少なくありません。

お腹は、生活のいちばん正直な記録

ぽっこりお腹は、怠けた結果ではありません。忙しかった時期、付き合いの多かった時期、眠りを削って頑張った時期が、そのまま形になったものです。

だからこそ、責めるより、届く段ボールの流れを一つずつ変えていく。
今夜の締めの一品をやめることも、30分早く寝ることも、立派な片づけの一歩です。