骨盤の歪みは、鏡の前に立つ、靴底を見る、片脚で立つ。この3つで、自分でもおおよその目安がわかります。
ただし、先にお伝えしておきたいことがあります。骨盤の「歪み」は、骨がパズルのようにずれているわけではありません。多くの場合、まわりの筋肉の左右差に引っぱられて、骨盤が少し「傾いている」状態です。
だからチェックで見るのは、骨の位置そのものより、傾きのくせと、身体の使い方の左右差です。順番にお話しします。
骨盤は「ずれる」より「傾く」
骨盤の後ろ側には、背骨の土台の骨と左右の骨盤をつなぐ、仙腸関節という関節があります。ここは強い靭帯でがっちりと固められていて、動く量はとても小さいことが、研究で確かめられています。動いても1度に満たない程度で、手で押して位置を戻せるようなものではないと考えられています。
では、なぜ「骨盤が歪んでいる」と感じるのか。それは、骨盤という塊全体が、まわりの筋肉に引かれて前後や左右に傾くからです。片側の腰まわりが縮んで硬くなれば、その側の骨盤は引き上げられます。お尻の横の筋肉が片側だけ弱ければ、立ったときに反対側へ沈みます。
前後の傾き、つまり反り腰については、反り腰のチェック方法で詳しく書いています。この記事では、もう一つの「左右の傾き」を中心にお伝えします。
鏡と靴底でできる、骨盤の歪みのチェック方法
1. 鏡の前で、腰骨の高さを比べる
鏡の正面に、靴下を脱いで、いつもどおりに立ちます。両手を腰に当て、親指以外の指で、骨盤のいちばん上の出っ張りを探します。そこに指を置いたまま、左右の指の高さを鏡で見比べてください。あわせて、ウエストのくびれの深さ、肩の高さも見ます。
2. 靴底のすり減り方を見る
よく履く靴を2足ほど並べ、かかとの減り方を左右で比べます。どちらか片側だけが極端に減っている場合は、その脚に体重を預けるくせがあるのかもしれません。外側が少し減るのは多くの人に見られるので、見るのは左右の差です。
3. 片脚で立って、左右の安定感を比べる
壁の近くで、片脚立ちを30秒ずつ行います。立っている脚と反対側の骨盤が、ストンと下がらないか。どちらかの脚だけぐらつく、すぐ足をついてしまう、という左右差がないかを見ます。
どれも、あくまで目安です。人の身体はもともと完全な左右対称ではなく、多少の差はあって当たり前です。一つの結果で決めつけず、3つの傾向がそろうかどうかを見てください。
骨盤は、ひもの長さが違う額縁
骨盤の傾きは、左右のひもの長さが違う額縁に似ています。
壁に掛けた額縁が傾いていたら、手でまっすぐに直しますよね。でも、吊るしているひもの長さが左右で違えば、手を離した瞬間、額縁はまた同じ方向へ傾きます。骨盤でいえば、額縁が骨、ひもが腰やお尻、太もものまわりの筋肉です。
セッションで多いのは、いつも同じ肩にバッグを掛け、立ち話のときは同じ脚に体重を乗せている方です。本人に聞くと「言われてみれば、いつも右脚です」とおっしゃいます。毎日の小さなくせが、片側のひもだけを少しずつ縮め、もう片方をゆるめていきます。
整体で骨盤を整えてもらうと、その場では楽になり、まっすぐになったように感じることがあります。こわばっていた筋肉がゆるみ、傾きのくせが一時的に軽くなるからです。けれど、ひもの長さを決めている毎日の立ち方、座り方、そして支える筋肉の働きが同じままなら、額縁は数日でまた傾きます。
B-side GYM の考え方
骨盤は、ずれているのではなく、引っぱられて傾いています。
骨を押す前に、ひもの長さをそろえる。
自分でできる、骨盤の左右差の入口のケア
チェックで左右差が見えた方に、安全にできるものを二つ紹介します。
1. 立ち方のくせを、反対側にも分ける
電車を待つとき、歯を磨くとき。体重を乗せている脚に気づいたら、両足の裏に均等に乗せ直します。バッグも、意識して反対の肩と交互に持ちます。地味ですが、ひもの片側だけを縮める時間を減らす、いちばん確実な方法です。
2. 横向きに寝て、上の脚をゆっくり持ち上げる
横向きに寝て、下の脚は軽く曲げ、上の脚はまっすぐ伸ばします。つま先は正面に向けたまま、かかとから天井へ押し出すように、脚を少しだけ持ち上げて3秒止め、ゆっくり下ろします。お尻の横がじんわり働いていれば正解です。腰が反ったり、つま先が上を向いたりしたら、高さを下げます。10回を左右で行い、片脚立ちでぐらついた側を、少し丁寧に行います。
腰や脚に痛みやしびれがある、左右の脚の長さが明らかに違う、という場合は、まず整形外科などの医療機関で診てもらってください。
一人では、また傾く理由
この二つで、傾きのくせは少しずつ変わっていきます。ただ、一人で続けていると、多くの方がどこかで元に戻ります。
理由は、どちらのひもが縮んでいて、どちらがゆるんでいるのかが、自分では見えないからです。右の骨盤が上がって見えても、原因が右の腰の硬さなのか、左のお尻の弱さなのかで、やることは逆になります。見立てを間違えたまま鍛えると、傾きを強めてしまうこともあります。
私たちが大切にしているのは、まず縮んだ側の力みを抜き、次にお腹の奥やお尻の横など、骨盤を下から支える筋肉を働かせ、そのうえで左右に均等に体重を乗せられる身体に積み上げていく順番です。骨を押して戻すのではなく、ひもの長さそのものをそろえていく。そうすると、額縁は手を離しても傾きにくくなります。
骨盤まわりの筋肉の引っぱり合いについては、猫背・巻き肩が治らないのは、筋肉の「綱引き」に負けているからも参考にしてください。
鏡の前に、一度立ってみてください
骨盤の歪みは、ある日突然できたものではありません。毎日の立ち方と座り方が、何年もかけて少しずつ形にしたものです。だから、戻すときも、毎日の小さな選び方から変わっていきます。
今夜、歯を磨くときに、どちらの脚に体重が乗っているか、気づくところから始めてみてください。それが、傾いた額縁のひもに、はじめて手をかける瞬間です。