40代の運動不足は、走ることや、追い込む筋トレから始めないほうがうまくいきます。
最初にやるのは、座りっぱなしを切ること、歩く量を少し増やすこと、関節を大きく動かすこと。この三つです。息が上がる運動や重りを使うトレーニングは、そのあとで十分間に合います。
拍子抜けするかもしれません。でも、この順番を飛ばした人ほど、どこかを痛めて、またゼロに戻ってしまいます。
国のガイドが示す、運動の目安
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、成人の目安として、歩行かそれと同じくらいの身体活動を1日60分以上(歩数でおよそ8,000歩)、息が弾むくらいの運動を週60分以上、筋力トレーニングを週2〜3日、と示しています。
数字だけを見ると、遠く感じるかもしれません。ただ、同じガイドには「個人差等を踏まえ、強度や量を調整し、可能なものから取り組もう」「今よりも少しでも多くからだを動かそう」とも書かれています。目標は目安であって、初日から達成するものではありません。
運動不足の身体は、長く閉めきっていた家
運動から遠ざかっていた身体は、長いあいだ閉めきっていた家に似ています。
久しぶりに戻った家で、いきなり大きな家具を動かす人はいません。まず窓を開けて風を通し、蛇口をひねってしばらく水を流し、家の中の様子を確かめてから、模様替えに取りかかります。
身体も同じです。歩くことは、窓を開けて風を通すこと。関節を大きく動かすことは、止まっていた水道に水を通すこと。走る、重いものを持ち上げるといった強い運動は、家具を動かす段階にあたります。
閉めきっていた家でいきなり家具を動かすと、床をこすったり、腰を痛めたりします。身体でも、急に運動量を増やしたときに、膝やふくらはぎ、アキレス腱まわりを痛めやすいと言われています。心肺や気持ちは数週間で前に進めても、腱や関節がその負荷に慣れるには、もう少し時間がかかると考えられています。
40代がやりがちな、三つのつまずき
セッションで多いのは、「健康診断で言われて、週末に5キロ走ってみたら、膝が痛くなって3週目でやめた」という方です。意志が弱かったのではなく、順番が逆だっただけです。
ほかにも、つまずきやすいパターンがあります。
- 平日ゼロ、週末に一気に取り返す月曜に疲れと痛みだけが残り、翌週の足が遠のきます
- 20代のころの感覚で、同じ重さや距離から再開する頭の記憶と、今の身体の状態がずれています
- 筋肉痛が出るまでやらないと意味がないと思う強い筋肉痛は、始めたばかりの身体には負担のほうが大きくなりがちです
始める順番は「切る・歩く・動かす」
初日からできる入口を、二つ紹介します。どちらも道具はいりません。
1. 座りっぱなしを、30分から1時間に一度切る
デスクワークの方は、ここがいちばんの近道です。会議が終わったら立つ、メールを1本送ったら立つ、と合図を決めておき、立ち上がって背伸びをし、その場で20歩ほど歩きます。長く座りっぱなしにならないことは、先ほどのガイドでも呼びかけられています。
2. 朝か夜に、関節を大きく動かす3分
次の順に、ゆっくり行います。
1. 両肩を大きく後ろに10回まわす
2. 両手を腰に当て、骨盤で大きな円を描くように左右5回ずつまわす
3. 椅子の背に手を添えて、片脚ずつ前後に10回ずつ振る
4. かかとの上げ下げを15回
痛みが出る動きは、そこで止めてください。勢いをつけず、動く範囲を少しずつ広げるのがコツです。
この二つに慣れてきたら、歩く量を増やします。いつもより一駅手前で降りる、エスカレーターを階段に変える。今の歩数にプラス1,000歩くらいから始めて、2〜3週間かけて増やしていけば十分です。
持病がある方、血圧や心臓のことで治療中の方、胸の痛みや強い息切れが出る方は、運動を始める前にかかりつけの医師に相談してください。
B-side GYM の考え方
運動不足の解消は、強い運動から始めなくていい。
窓を開け、水を通し、それから家具を動かす。
一人で始めると、どこで止まりやすいか
ここまでの入口は、一人でも十分できます。続ける仕組みについては運動が続かないのは、意志が弱いからではありませんで詳しく書いています。
一人でつまずきやすいのは、その次の段階です。家具を動かす段階、つまり負荷を上げる場面で、どこまで上げていいのか、どこが痛みのサインなのかが、自分では判断しにくいからです。40代の身体は、長年のデスクワークで股関節や背中の動きが偏っていることが多く、その偏りのまま負荷をかけると、弱いところに負担が集まります。
B-side GYMでは、まず姿勢と動きを見て、どの関節が動きにくくなっているかを確かめます。硬くなった部分をゆるめ、深いところで支える筋肉が働く状態をつくってから、少しずつ負荷を上げていきます。渋谷BASEは渋谷駅から徒歩5分。家具を動かす段階に入るときは、一緒に確かめながら進めることもできます。
窓を開けるだけで、家は変わり始める
運動不足を解消しようと思ったときに必要なのは、大きな決意ではありません。
今日、座りっぱなしを一度切ってみる。それだけで、閉めきっていた家に風が通り始めます。強い運動は、家の中が整ってからで遅くありません。