休んでも疲れが抜けない。夜になっても頭が冴えている。なんとなく、ずっと気が張っている。
そんなとき「自律神経を整える方法」を調べる方は多いと思います。
結論からお伝えすると、いちばん確実な入り口は、吐く息を長くすることです。
自律神経は、心臓や胃腸と同じで、自分の意思では直接動かせません。けれど呼吸だけは、自動でも動き、自分の意思でも変えられます。この「両方で動かせる」呼吸が、自律神経に外から働きかけられる、数少ない入り口なのです。
自律神経は、正面玄関に鍵がかかった建物
自律神経には、身体を活動に向かわせるアクセル役(交感神経)と、休ませるブレーキ役(副交感神経)があります。この二つの切り替えは、本人の気持ちとは別のところで、自動で行われています。
たとえるなら、自律神経は正面玄関に鍵がかかった建物のようなものです。
「落ち着け」「リラックスしよう」と念じるのは、鍵のかかった玄関を叩き続けるのに似ています。いくら叩いても、扉は開きません。むしろ、うまくいかない焦りで、余計に気が張ってしまうこともあります。
ただ、この建物には通用口があります。
それが、呼吸と、筋肉の力みです。どちらも自分で変えられて、しかも自律神経とつながっています。整える方法とは、正面玄関ではなく、この通用口から入ることだと考えてください。
なぜ「吸う」より「吐く」なのか
呼吸と心臓の動きは、つながっています。
息を吸うときは心拍がわずかに速くなり、吐くときはゆっくりになります。吐いている間は、ブレーキ役の神経が働きやすいためで、これは誰の身体にも起きている自然な反応です。
つまり、吐く時間を長くするほど、ブレーキの効いている時間が長くなる。
1分間に6回前後のゆっくりした呼吸で、ブレーキ役の神経の働きを示す指標が高まることも、多くの研究で報告されています。
もう一つ、興味深い研究があります。
米国スタンフォード大学のグループが、1日5分の呼吸法を1か月続けてもらったところ、吸ったあとにもう一度短く吸い足し、ゆっくり長く吐く呼吸を続けた人たちで、気分の改善と、普段の呼吸数の低下がもっとも大きくみられました。
特別な道具も場所もいらない、5分の呼吸で変化が出たことは、忙しく働く人にとって心強い結果です。
自律神経を整える呼吸のやり方
痛みや持病がない方は、次の手順で試してみてください。
- 座る椅子に浅めに座り、肩の力を抜く。手はももの上に置く
- 鼻から吸う鼻からゆっくり吸い、吸いきったところで、もう一度だけ短く吸い足す
- 口から長く吐く口を軽くすぼめ、吸った時間の倍くらいをかけて、細く長く吐ききる
- 繰り返すこれを1分から始め、慣れたら5分まで
秒数は正確でなくてかまいません。大切なのは、吐くほうを長くすることです。
途中で苦しくなったり、頭がくらくらしたりしたら、すぐに普段の呼吸に戻してください。
日中にできる、もう一つの通用口
二つ目の通用口は、筋肉の力みです。
身体が力んでいると、脳はそれを「まだ気を抜けない状況だ」と受け取ります。気持ちより先に、身体の緊張がアクセルを踏み続けているのです。
日中にできる切り替えとして、次の方法があります。
両肩を耳に近づけるように5秒ぎゅっとすくめ、一気にストンと落とす。これを3回。
一度あえて力を入れてから抜くと、力が抜けた感覚がはっきりわかります。会議の前後や、画面から目を離したタイミングに挟んでみてください。
セッションでお身体を見ていて多いのは、ご本人は「力を抜いているつもり」なのに、肩や首、お腹がずっと固まっている方です。
緊張していることに、身体のほうが慣れてしまっている。力んでいる状態が、その人にとっての「普通」になっているのです。
B-side GYM の考え方
自律神経は、命令では動かない。
呼吸と力みという通用口から、ブレーキの踏み方を身体に思い出させる。
一人でやると、効果が続かない理由
呼吸も力抜きも、その場では効きます。けれど、多くの方は数日で忘れるか、効いている感じがしなくなっていきます。
理由の一つは、深く吐けない身体のままだからです。
背中が丸まり、肋骨が動かなくなっていると、そもそも長く吐ききれません。呼吸の土台については、呼吸が浅いせいかもしれませんでも詳しく書いています。
もう一つは、力みが抜けた感覚そのものを、身体が覚えていないことです。抜けた状態を知らなければ、自分で戻ることもできません。
だから私たちは、まず固まった筋肉の緊張をゆるめ、肋骨や背骨が呼吸に合わせて動く状態に戻すところから始めます。そのうえで、アクセルを踏んだあとにブレーキを踏める身体を、トレーニングで少しずつ育てていきます。
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なお、動悸やめまい、眠れない状態が長く続く場合は、自律神経のせいと決めつけず、まず医療機関を受診してください。別の病気が隠れていることもあります。
整えるとは、ブレーキの踏み方を思い出すこと
自律神経を整えるとは、ずっと穏やかでいることではありません。
アクセルを踏むべきときに踏み、終わったらブレーキを踏める。その切り替えが、身体の中でもう一度起きるようにすることです。
今夜、布団に入る前に、1分だけ長く吐いてみてください。
鍵のかかった玄関を叩くのをやめて、通用口から、静かに入っていく。それだけで、身体の夜の迎え方が少し変わるはずです。