ある朝、顔を洗おうとかがんだ瞬間。床のものを、ひょいと持ち上げようとした瞬間。
突然、腰に激痛が走って、動けなくなる。いわゆる、ぎっくり腰です。
多くの人は、これを「急に、運悪くなった」ものだと思っています。でも、そうではありません。
ぎっくり腰は、急になるのではありません。その一瞬までに、ずっと溜まっていたものが、限界を超えて、あふれ出しただけなのです。
その一瞬は、きっかけにすぎない
ぎっくり腰になったとき、人は、その直前の動作を犯人だと考えます。かがんだから。持ち上げたから。ひねったから。
でも、考えてみてください。かがむことも、物を持ち上げることも、普段から何百回もやっている動作です。それなのに、なぜ、その一回だけで、腰は悲鳴を上げたのか。
答えは、その動作が原因ではないからです。腰は、その一瞬に壊れたのではなく、それまでに、少しずつ、限界まで追い詰められていた。そして、たまたまその動作が、最後の一押しになっただけなのです。
コップに、水が少しずつ注がれていく。あふれた瞬間だけを見れば、最後の一滴が原因に見える。でも本当は、それまでに、コップは満杯になっていたのです。
溜まっていたものの、正体
では、腰には何が溜まっていたのか。
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ひとつは、抜けない緊張。
一日中、気を張り、身体が力んだままだと、腰まわりの筋肉も、こわばり続けます。硬く緊張した筋肉は、余裕がありません。少しの負荷でも、限界を超えやすくなります。
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もうひとつは、狭くなった可動域。
身体が硬く、動かせる範囲が狭いと、本来なら全身で分散できるはずの負荷が、腰の一点に集中します。股関節や背中が動かない分を、腰が肩代わりして、無理をし続けているのです。
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そして、崩れた姿勢。
反り腰や猫背で、腰に常に負担がかかっていると、腰は、休むことなく、少しずつ削られていきます。
こうして、緊張し、動かず、負担をかけられ続けた腰は、知らないうちに、限界のふちまで追い詰められている。そこに、何気ない動作が加わって、あふれる。それが、ぎっくり腰です。
腰と姿勢の話は、以前「腰痛は、腰の問題じゃない」でも書いています。
B-side GYM の考え方
最後の一滴を、犯人にしない。
ぎっくり腰の入口は、動作の一瞬ではなく、それまでの毎日にあります。
つまり、防げるということ
この見方には、希望があります。
ぎっくり腰が、突然の不運ではなく、蓄積の結果なのだとしたら。その蓄積を、事前に減らしておけば、防げるということだからです。
腰まわりの緊張を、こまめに抜いておく。身体の可動域を広げて、腰に負担が集中しないようにする。姿勢を整えて、日々の負担そのものを減らす。
これをやっておけば、コップに水が溜まりにくくなる。同じ動作をしても、あふれない身体でいられます。
一度ぎっくり腰をやると、癖になりやすいと言われます。それは、根本にある「溜まりやすい身体」が、変わっていないからです。痛みが引いても、蓄積しやすい身体のままなら、また、いつかあふれます。
痛くなる前に、身体を整えておく
ぎっくり腰の怖いところは、なってからでは、しばらく動けなくなることです。仕事も、生活も、止まってしまう。
そして、たいていの人は、痛くなってから、はじめて腰のことを考えます。でも、本当に大事なのは、痛くなる前の身体です。
今、腰に痛みがなくても、緊張が抜けず、身体が硬く、姿勢が崩れているなら、あなたの腰のコップは、すでに、かなり満たされているかもしれません。
もし、腰に不安があるなら。あるいは、過去にぎっくり腰をやったことがあるなら。痛みが出る前に、一度、自分の腰に何が溜まっているのかを、確かめてみてください。
ぎっくり腰は、防げます。そのための一歩は、あふれてからではなく、あふれる前に踏み出すものです。