猫背を治そうと決めたとき、いちばん知りたいのは「どのくらいかかるのか」だと思います。

先に目安をお伝えします。
姿勢を意識した運動を続けると、背中が軽い、立ちやすいといった変化は、早い方で数週間のうちに感じ始めます。
一方で、その姿勢が意識しなくても続く「自分の普通」になるまでには、数か月単位の時間がかかるのが一般的です。
もちろん、年齢や猫背になってきた年数、仕事の姿勢によって個人差は大きく、期間を約束できるものではありません。

そして、何か月がんばっても戻ってしまう人には、共通点があります。
背中の筋肉より先に、身体が感じている「まっすぐ」の基準が、猫背のままずれているのです。

猫背が「治る」には、2つの段階がある

猫背が変わるとき、身体の中では2つのことが起きています。

ひとつ目は、形の変化です。
縮こまっていた胸の前がゆるみ、引き伸ばされて働きにくくなっていた背中側の筋肉が、また力を出せるようになる。
筋肉の前後の引っ張り合いについては、猫背・巻き肩が治らない理由を「綱引き」で説明した記事でも詳しく書きました。

ふたつ目は、感覚の変化です。
私たちは、自分が今どんな姿勢でいるかを、筋肉や関節にあるセンサーで感じ取っています。
長く猫背で過ごすと、このセンサーが丸まった背中を「まっすぐ」だと覚えてしまいます。

ゼロ点がずれた体重計を思い浮かべてください。
いくら正しく乗っても、表示はいつも少しずれる。
猫背の人が胸を張ると「反りすぎている」「不自然だ」と感じるのは、この身体の中のゼロ点がずれているからです。

自力で治す場合の期間の目安

あくまで目安ですが、段階ごとに分けるとこうなります。

研究でも、背中の丸みが強い高齢の女性が週2回・12週間の運動を続けたところ、背中の丸みの角度が小さくなったと報告されています。
対象は限られていますが、数か月続ければ、形そのものも変わりうるということです。

また、新しい行動が習慣として自動的にできるようになるまでには、平均で2か月あまり、人によっては半年以上かかったという研究もあります。
姿勢も、毎日の「くせ」のひとつです。
2週間で変わらないからといって、あきらめる必要はありません。

矯正ベルトや「胸を張る意識」だけでは戻る理由

早く治したくて、矯正ベルトに頼ったり、一日中胸を張るよう気をつけたりする方は多いと思います。

どちらも、正しい姿勢を一時的に体験するきっかけにはなります。
ただ、ベルトに支えられている間は、自分の筋肉で支える必要がありません。
頼りきってしまうと、外したときに支える力が育っていないことがあると言われています。

意識で胸を張るのも同じです。
仕事に集中した瞬間、意識は姿勢から離れ、ずれたゼロ点に引き戻されます。
戻るのは意志が弱いからではなく、基準が書き換わっていないからです。

猫背のチェック方法と、自分でできること

1. 壁に立って、ゼロ点を確かめる

正解の姿勢を鏡ではなく身体で覚えるのが目的です。

2. 座ったまま、坐骨に乗り直す

猫背は背中だけでなく、骨盤が後ろに倒れた座り方から始まることが多いため、土台から位置を戻します。

どちらも痛みが出る場合は無理をしないでください。
背中や腰に強い痛みやしびれがある、短い期間で背中の丸みが急に強くなってきた、という場合は、姿勢のくせ以外の原因も考えられるため、まず整形外科で相談してください。

一人だと戻りやすいのは、自分のずれが見えないから

セッションでよくお会いするのは、毎日ストレッチも背中のトレーニングもしているのに、猫背が戻ってしまう方です。
姿勢を見せていただくと、背中よりも、頭の位置や骨盤の傾きにくせが残っていることが少なくありません。
本人は「まっすぐ」のつもりでも、ゼロ点がずれたまま運動をしているので、ずれた姿勢のまま筋肉がついていくのです。

自分のゼロ点のずれは、自分では感じ取れません。
だからこそ、外から姿勢と動きを見て、どこが縮み、どこが働いていないのかを確かめ、正しい位置の感覚をその場で身体に覚えてもらうことが近道になります。

B-side GYM の考え方

猫背を治すとは、背中の形を変えることと、
「まっすぐ」の基準を書き換えることの、両方です。

期間より大切なのは、基準が変わったかどうか

猫背が治るまでの期間は、何か月と決めきれるものではありません。
ただ、「背中の形」と「まっすぐの基準」の両方が変わったとき、姿勢は意識しなくても戻らなくなります。

渋谷で働く方の中には、長時間のデスクワークで、数年かけて今の姿勢になった方も多いはずです。
数年かけてずれたゼロ点を、数日で戻そうとしなくて大丈夫です。
体重計のゼロ点を合わせ直すように、まずは自分の「まっすぐ」がどこにあるのかを知るところから、始めてみてください。