パソコンに向かって、仕事に没頭しているとき。
大事な資料を読み込んでいるとき。
気づくと、奥歯をぐっと噛みしめている。
あるいは、夕方になると、なぜか顎が疲れている。こめかみのあたりが張っている。
思い当たることがあるなら、それは、無意識の食いしばりのサインかもしれません。
この食いしばりは、顎だけの問題にとどまりません。
頭痛や、肩こり、首のこり、そして眠りの質にまで、静かに影響を広げていきます。
順番にお話しします。
本来、上下の歯は、ほとんど触れていない
まず、意外に思われることをお伝えします。
起きているあいだ、上下の歯は、ほとんど触れていないのが正常な状態です。
安静にしているとき、上下の歯のあいだには、1ミリから3ミリほどの、わずかな隙間があります。
歯どうしがしっかり接触するのは、食べ物を噛むときや、飲み込むとき。
一日のうち、ごくわずかな時間だけです。
それ以外のとき、歯は、触れていないのが本来の姿なのです。
ところが、集中しているときや、緊張しているときに、
この上下の歯を、無意識に接触させ、噛みしめ続けてしまう人がいます。
強く食いしばっていなくても、軽く触れさせているだけで、顎を動かす筋肉は、働き続けます。
本来は休んでいるはずの筋肉が、気づかないうちに、ずっと働かされている。
これが、食いしばりの正体です。
集中とストレスが、噛みしめを生む
では、なぜ無意識に噛みしめてしまうのか。
大きな引き金のひとつが、集中です。
パソコン作業や、スマートフォンの操作、細かい作業に没頭しているとき、
人は、無意識に奥歯を接触させ、噛みしめやすくなると言われています。
もうひとつが、ストレスや緊張です。
気を張り、プレッシャーを感じているとき、
身体全体が力む流れのなかで、顎にも、ぐっと力が入ってしまう。
つまり、食いしばりは、顎だけで起きているのではありません。
身体が緊張し、力みっぱなしになっている、その状態の一部として、顎にも力が入っている。
顎は、全身の緊張が、表に出やすい場所のひとつなのです。
やっかいなのは、噛みしめが続くと、脳がその状態に慣れてしまい、
噛んでいること自体に、気づけなくなっていくことです。
顎の緊張が、頭痛や肩こりを呼ぶ
噛みしめ続けると、顎を動かす筋肉が、疲労し、こり固まっていきます。
この筋肉は、こめかみのあたりや、頬、エラの周辺に広がっています。
ここが張ってくると、その影響は、顎の外にも及びます。
こめかみ周辺の筋肉がこわばれば、頭が締めつけられるような重さや、頭痛につながることがあります。
顎や首まわりの筋肉は、肩や首ともつながっているため、
顎の緊張が、肩こりや首のこりに、連動していくこともあると言われています。
「原因のはっきりしない頭痛が続く」「マッサージに行っても肩こりが戻る」。
その裏に、日中の食いしばりが隠れていることは、少なくありません。
さらに、この噛みしめは、夜にも持ち越されます。
日中、顎に力を入れる癖がついていると、眠っているあいだも、歯ぎしりや食いしばりが起きやすくなる。
すると、眠りが浅くなり、朝起きても顎が疲れている、疲れが取れていない、という状態になります。
顎の小さな緊張が、頭、肩、首、そして睡眠にまで、波紋のように広がっていくのです。
気づいて力を抜く、その先に土台がある
では、どうすればいいのか。
第一歩は、気づくことです。
仕事の合間に、ふと、上下の歯が触れていないかを確認してみてください。
もし触れていたら、すっと顎の力を抜いて、歯を離す。軽く息を吐いて、肩の力も抜く。
これを、思い出すたびに繰り返すだけでも、噛みしめの癖は、少しずつゆるんでいきます。
ただ、気づいて力を抜くことには、限界もあります。
なぜなら、食いしばりは、全身の緊張の一部だからです。
身体が緊張し、力を抜けない状態のままでは、気づいて顎をゆるめても、集中した瞬間、また力が入ってしまう。
だからこそ、根本では、力を抜ける身体そのものを、取り戻していく必要があります。
具体的には、こういうことです。
一日中、気を張って固まった首や肩の緊張を、ゆるめられるようにする。
浅くなった呼吸を、深く、長く吐けるようにして、身体を休むモードへ切り替える。
そして、常に力が入りっぱなしの状態から、必要なときだけ力を使い、あとは抜いていられる状態へ、戻していく。
こうして、身体全体が力を抜けるようになると、
その一部である顎も、自然と、力みから解放されていきます。
B-side GYM の考え方
食いしばりは、顎だけの問題ではなく、全身の緊張の一部。
顎だけをゆるめるのではなく、力を抜ける身体そのものを取り戻す。
顎の力みは、身体からのメッセージ
まとめます。
無意識の食いしばりは、集中や緊張によって、本来休んでいるはずの顎の筋肉が、働き続けている状態です。
そしてそれは、顎だけの問題ではなく、頭痛や肩こり、睡眠の質にまで、影響を広げていきます。
その奥には、力を抜けなくなった、身体全体の緊張があります。
だから、顎だけをどうにかしようとしても、根本は変わりません。
もし、集中すると歯を噛みしめている、夕方に顎やこめかみが張る、
原因のわからない頭痛や肩こりが続いている、という自覚があるなら。
それは、あなたの身体が、力を抜けなくなっているというメッセージかもしれません。
顎の力みに気づいたら、それを入り口に、
力を抜ける身体そのものに、目を向けてみてください。